稽古日誌

剣道で「遠間から勝負しなさい」という指導は正しいのか

最近は言われなくなってきたのですが、20代の時は「若いんだから遠間から勝負をかけなさい」と言われることがよくありました。わたしは身長が180㎝あるため、もっと体格を活かさないと、と言われることがありました。

 

 

これ、半分正しくて半分間違いかな、と指導する側になって気づきました。正しくは「遠い間合」からしっかりと攻め込んできなさい、という解釈だと思います。

 

今日はその説明をしてみたいと思います。

 

 

なぜ「遠間から勝負をかけなさい」と言われてしまうのか

高段者の方々も「若いんだから筋肉を活かせば遠間から打てるでしょ」という意味では言っていません。剣道は身体能力ありきの武道ではない、というのは高段者の方々が提唱されているくらいなので、そういった意図ではないことは推測できます。

 

わたしがこの言葉をかけたくなる人をイメージしてみると、近間主体の剣道の人かな、と思いました。近間での展開自体が悪いとは思っていません。相手や使いどころによっては近間での攻防が有効になることは大いにあります。

 

ですが、なぜ近間で勝負をかけたくなるのか、と考えてみますと

1)遠くから打っても当たる気がしない

2)遠間からだと応じられそうで怖い

3)卓越した身体能力を発揮できる(通常、この理由は無いでしょう…)

 

 

の3つが思い浮かびます。3つに共通しているのは

攻めとは何か、の答えが見いだせない

 

というのが一番の理由かな、と。

 

 

近間とは

竹刀の中結よりも深く入り込んだ間合のことで、その場で手を伸ばせば届く距離。なので物理的に怖い距離です。

 

画像準備

 

ということは、相手も崩れやすい距離なので、攻めを意識せずとも気持ち次第で自分の方が有利に見えるような距離です。敢えて嫌な言い方をすると、攻めをごまかせる距離です。

 

 

仮に近間主体の剣道が良しとしても、近間に入るまでが簡単ではありません。近間に入る方法として、たいていは遠間付近から継ぎ足をして間合いに入る、もしくは自分の構えを崩し、防御しながら間合いに入るかのどちらかです。この2つの方法に緻密さがあるのかは疑問です。

 

間合いの入り方が意識出来ている人なのであれば、近間で剣道をしても、攻めの選択肢の一つとして全く問題無いと思います。ただ、間合いの入り方を理解できている人なのであれば、近間の打突は選択肢の一つなだけで、どの間合でも剣道ができると思います。

 

さらに加えると、間合いを意識できる人は、攻めを知らずにとにかく継ぎ足で近間に入ろうとした瞬間、逆にそこを乗って打突してきます。なので、攻めを知らずに近間に入ることは自分をピンチにしてしまうかもしれません。

 

遠間から打突をしないといけないの?

では、遠間から勝負をかけなさい、はどのように解釈すればよいのか。これは、遠間から「打突しなさい」とは言っていないのがポイント。

 

「遠間から仕掛けろ」というのは遠間から攻めを見せろ、という意味だと受け取るべき、と解釈します。

 

どうしても「勝負をかける・仕掛ける=打つ」と考えがちです。しかし「攻め=打つ」ではありません。

 

 

例えば攻めの表現の仕方として、左腰を入れる、というのがあります。これは、構えている状態から、左腰をほんの少し前出す反動で右足を半歩前に出す。すると、相手が「来る!」と思い込んでしまいがち。その他の攻めを見せることで相手を迷わせる、その結果としていきなり打ち込んでも有効打突になる、という構図が成立します。

 

 

逆に、相手(A)が気持ち十分な状態なのに、その相手(B)がいきなり攻めもなく打ち込む、つまりAに「Bは動く=打つ」と認識されてしまえば、それが応じるタイミングとなってしまい、Bはピンチになるだけです。

 

 

そして、Bが攻めを知っていたとして、これを近間、つまり中結より深く入り込んだ状態からさらに右足半歩分も前に出てしまうと、Bは打ち込むことができません。

 

なので、触刃の間(切っ先と切っ先が触れる寸前のところ)から仕掛けることで、交刃の間(切っ先と切っ先が交差するところ)まで入り込み、打突をしなさい、という意味になります。

 

まとめ

教科書を読んでから行動するか・行動してからわからないところを教科書で確認するか、という教え方があります。剣道は明らかに後者だと思っていますし、この教え方の方が身につくと思っているので賛成です。

 

 

しかし、その教えが先行しすぎていて言葉足らずな場面が多いなあ、と思っています。例えば、攻めたら我慢、という教えを耳にしたことがあると思いますが、これもニュアンスが少し違うような気がするんです。

 

わたし、このサイトを通じてその言葉足らずな部分の補足をしていきたいな、と思ってこのサイト作りを続けていこうと思います。